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「日常を研究する〜研究思考を取り入れた生活〜」 〜話題すぎるチーズケーキの誕生秘話〜

株式会社Mr.CHEESE CAKE  | 田村浩二シェフ

# 問いの育て方

Overview

研究とはアカデミアだけに使われる用語ではない。料理人でもあり、研究者でもある田村シェフをお招きし、トークをしていただいたのは「日常に活かせる研究思考」について。多くの人々にとっては「研究」と一まとめに定義された言葉は、「日常から切り離されているもの」と嫌厭されがちなもの。一方で、研究で培った仮説検証、分析、リサーチ、フィールドワークなどの経験は研究職以外に、様々な現場で活かせる能力であると考えます。田村さんがこの考えに至るまでの経緯や、研究的思考を様々な分野に導入する前と導入した後の違いについて、はじめての学会のトークセッションでご講演していただいた。

研究思考1:飲食業界での「あたりまえ」的な思考からの脱却

飲食業界には人件費という概念があまりない。残業代があまりなく、長く働かせればいいという考えが蔓延していた。この人件費を数字で考えたときに、作業が短ければ短ければほど人件費が下がるからお店的にはその方がいい。なるべく時間をかけずに原価率も高くなくお客様が美味しいと感じるものがベストであるが、これらを一つ一つ切り分けて考えられる人があまりいない。そういうことを一つ一つ解像度を上げて考えた結果、料理というのは目的ではなくて手段である、というように考えるようになった。料理を作る上で、美味しくないといけないというのは絶対であるが、もっと全体感を持って捉えないといけない。

ここで自分の料理に対して大切にしている哲学に通じてくるのであるが、ぶれることが嫌い、一定のクオリティーを常に出すことと、時間やもののロスが出るのが嫌い、また、頑張った分だけ成果を出したいと考えている。ただ、飲食業界というのは利益を増やす上で料理のレベルが上がったとしても、客単価や営業日数で利益が決まっているため、なかなか利益率を上げずらい。そのことから、自分がどんなに上を上げたとしても利益率は増えないということを感じ、そもそもレストランで働くことの意味を考え始め今の働き方に通じている。

つまり、今自分が働いている、携わっている環境が自分が果たしたい目標のために本当に適した環境なのか「あたりまえ」を脱して考える必要がある。

あえて業界を出ることで、その他の業界のビジネス形態などを知ることとなり、それを自分の業界(飲食業)に関係させながら考えるようになった。全く関係ないと思っていた知識が繋がっていく瞬間に出会う。

研究思考2:「やりたいこと、できること、今やれること、切り分けて考える」

自分の中で将来的にやりたいことがあり、今持っているスキルでできること、スキルとは別で時間的に、環境的に今できることというのがある。できること、今やれることが将来的にやりたいことと違うのに目指すのは勿体無い。重要なのは自分が持っている能力がどの場所でどのように発揮されるのか理解することである。僕は料理人として働いて職人的な部分もあれば、今は経営者として経営している自分もいる。と同時に、その二人の自分を客観的に見ている第三の自分がいる。この第三の自分が、やりたいことを実現するために「できることを行う自分、今やれることを行う自分」をしっかりと監督しロングタームで監督をする。人は、自分の将来を考えたときに、10年のスパンで考えてしまう人が多い。しかし生きていくながで30年後の人生の方がずっと長い。さらに、20代から30代までの10年間一生懸命技術を培っても、結婚などを経てライフステージが20代の頃からガラッと変わってしまうということ多い。結婚や出産を減ることで、今までの技術を持ってしてもうまく使えていない人を飲食業界ではたくさん見てきた。このように、30代以降活かせるスキルを考えると全く考え方が変わってくる。そのように感がていく中で、自分がこれから掲げるべき問いに出会うきっかけになった。

経営者としての視座を得るために、2年間で30都道府県を回って様々な生産者にあった。その中で良いものにたくさん出会ったり、良いものだけど新しすぎるために世に出ていないというものに出会った。例えば、国産の食べられる薔薇というのがあるが、薔薇を食べる文化自体がまだあまり広まっていないためにその素晴らしさが伝わらない。自分はその薔薇を使ってアイスクリーム作り、「料理」を通じて世に届けたり、若者などにはあまり馴染みのない干物なども味や調理の仕方を変えることで世の中に伝えることをしてきた。また、現在日本の林業は海外の安い木などが輸入されることで雑木林などが手入れをされていない状態のところが増えてしまっている。そのため、「木を食べる」というプロジェクトなども行った。ライフルさんという会社と一緒に杉の木を粉末にし、ケーキにすることで環境について考えるきっかけを作った。このように料理人として厨房にただこもり食の技術を磨くだけでなく、経営者としてそのほかの分野の知識を得るために、日本中を回る中で、自分が出会った人や場所で見つけた問題を自分の能力でどう解決できるのか考えるのが好きであると気づいた。この将来「やりたい」と考えていることを成し遂げるためには、今持っている料理を通じて伝えることができる美味しいものを作れるというのが能力のほか、自分が前に出ていろんな話をして伝える能力がこれから成し遂げたいことを達成するには培って行かなければいけないスキルであると気づいた。

研究思考3:日常の中の研究、田村流研究思考

一般的な研究というのは問いがあって、研究分析を行い結論に行き着くというものであるが、自分にとって研究とは、日常があって、その日常の中で料理をすることや生産者に会うことがあり、その中で課題に出会い、それをどう解決するのかなどの出口を考えるということを繰り返してきた。このような考え方を自分の生活に当て込んで考えてみる。日常的にどんなものに対しても興味をもち、考えるということの大切さを伝えたい。

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